例題で理解する関数の連続(解析学 第I章 実数と連続11)


解析学を学ぶ上で基本的かつ重要な概念に「関数の連続」があります.
二次関数のグラフは本当に繋がっているのか?どうやって証明する?
例題を解きながらその証明方法を理解していきます.

関数\(f(x)\)が連続であることの定義

まず関数\(f(x)\)が連続であるとはどういうことかを定義します.

高校までは,グラフを書くとき何点かプロットして,それらを滑らかに繋げていました.

無限の点では確かめてないのに,感覚的に繋がっていると思っているわけです.

ここは連続性をきちんと数学的に示していきたいと思います.
そうすることで,経験したことのないような想像もつかない関数でも連続かどうかをアプリオリ(先験的に,感覚とは独立に)に判断できるようになるわけですね.

定義(関数の連続)\(D \subset \mathbb{R}^n, f:D \rightarrow \mathbb{R}^m\)とする.
関数\(f(x)\)が\(a\in D\)で連続
\(\Longleftrightarrow \displaystyle \lim_{x \to a}f(x) = f(a)\)
\(\Longleftrightarrow \) 任意の正の実数\(\epsilon\)に対して,ある正の実数\(\delta\)が存在し,\(|x-a|<\delta\)となる\(x\)に関して,\(|f(x)-f(a)|<\epsilon\)となる.

ここで\(f(x)\)は\(m\)次元のベクトル値となるような\(n\)変数の関数です.

つまり,\(x\)と\(a\)を近くにすれば,\(f(x)\)と\(f(a)\)の値をいくらでも近づけるようにできるというのが,連続ということです.
\(D\)の各点で連続となるときは,\(f\)は\(D\)で連続といいます.

連続性証明の例題6問-次の関数の連続性を示せ-

では例題で連続性を確認していきます.

1.\(f(x)=x^2\)

天下り的に\(\delta\)を\(\epsilon,a\)に対する値として求めます.
条件としては\(|x-a|<\delta\)です.
$$|x^2-a^2|=|x+a||x-a|<|x+a|\delta\leq(|x|+|a|)\delta$$
この最右辺が\(\epsilon\)になるので,ここを\(x\)が含まれないような形にしたい.

\(|x-a|<\delta\)と\(|x|-|a| \leq |x-a|\)より,\(|x|<|a|+\delta \).よって,$$(|x|+|a|)\delta < (2|a|+\delta)\delta$$この式で\(\delta \)を解くと,\(\delta  >0\)より,$$\delta = -|a|+\sqrt{a^2+\epsilon}$$
このような\(\delta\)をとれば,\(|f(x)-f(a)|<\epsilon\)とできる.

今,\(a\)は任意だったので,\(f(x)=x^2\)は\((-\infty,\infty)\)で連続.

2.\(f(x)=\displaystyle \frac{1}{x}\)

$$\left |\displaystyle \frac{1}{x} – \displaystyle \frac{1}{x} \right|=\displaystyle \frac{|x-a|}{|xa|}<\displaystyle \frac{\delta}{|xa|} < \epsilon$$ここで,\(x\)を消したいので,\(a\)によって評価する.\(|x-a|<\displaystyle \frac{|a|}{2}\)ととっておく.

よって,\(\displaystyle \frac{\delta}{|xa|}<\displaystyle \frac{\delta}{\frac{|a^2|}{2}}<\epsilon \)$$∴ \delta < \displaystyle \frac{|a^2|\epsilon}{2}$$\(\delta\)は\(\displaystyle \frac{|a|}{2}\)も\(\displaystyle \frac{|a^2|\epsilon}{2}\)も超えないようにとればいいので,

\(\delta = \min \left \{ \displaystyle \frac{|a|}{2},\displaystyle \frac{|a^2|\epsilon}{2}\right \}\)とできる.

よって,\(\displaystyle \frac{1}{x}\)は\(\mathbb{R}\0\)で連続.

3.\(f(x)=\sqrt{x}\)

$$|\sqrt{x}-\sqrt{a}|=\displaystyle \frac{|x-a|}{\sqrt{x}+\sqrt{a}}$$$$<\displaystyle \frac{\delta}{\sqrt{x}+\sqrt{a}}<\displaystyle \frac{\delta}{\sqrt{a}}$$$$∴ \delta = \sqrt{a}\epsilon$$とすればよい.

よって,\(f(x)=\sqrt{x}\)は\([0,\infty)\)で連続.

4.\(f(x)=\sin{x}\)

$$|\sin{x}-\sin{a}|=2 \left | \cos \displaystyle \frac{x+a}{2} \sin \displaystyle \frac{x-a}{2} \right |$$\(|\cos{x}|\leq 1,|\cos{x}|\leq x\)より$$\leq 2\displaystyle \left | \frac{x-a}{2} \right |=|x-a|=\delta.$$$$∴ \delta = \epsilon$$とすればよい.

よって,\(f(x)=\sin{x}\)は\((-\infty,\infty)\)で連続.

5.\(f(x)=e^x\)

$$|e^x-e^a|=e^a|e^{|x-a|-1}| < e^a(e^{\delta}-1)=\epsilon $$$$∴ e^{\delta}=\epsilon e^{-a}+1$$$$∴ \delta = \log{(\epsilon e^{-a}+1)}$$ととれて,\(f(x)=e^{x}\)は\((-\infty,\infty)\)で連続.

6.\(f(x)=\log{x}\)

(ⅰ) \( 0 < x-a < \delta \)のとき(つまり\(x\)が\(a\)の右側から近づくとき)$$|\log{x}-\log{a}|=\log{\frac{x}{a}}=\log{\left (1+\frac{x}{a}-1 \right )}$$$$<\frac{x}{a}-1 (∵対数関数の1次近似)$$$$=\frac{x-a}{a}$$$$<\frac{\delta}{a}=\epsilon$$$$∴ \delta = a\epsilon.$$

(ⅱ) \( 0 < a-x < \delta \)のとき(つまり\(x\)が\(a\)の左側から近づくとき)$$|\log{x}-\log{a}|=\log{\frac{a}{x}}=\log{\left (1+\frac{a}{x}-1 \right )}$$$$<\frac{a}{x}-1=\frac{a-x}{x}$$$$<\frac{\delta}{x}$$ここで,\(\delta\)を\(\delta \leq \displaystyle \frac{a}{2}\)ととっておくと,\(x > \displaystyle \frac{a}{2}\)となる.よって,$$\frac{\delta}{x}<\frac{2\delta}{a}=\epsilon$$$$∴ \delta = \frac{a\epsilon}{2}.$$(ⅰ),(ⅱ)より,\(\delta\)として,$$\delta = \min \left \{\displaystyle \frac{a}{2}, \frac{a\epsilon}{2} \right \}$$がとれて,\(f(x)=\log{x}\)は\((0,\infty)\)で連続.

 

実際に連続性を証明するのはなかなか大変でした.
ε-δ論法を理解する練習としてはよいかもしれません.

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