点列コンパクト・開集合・閉集合の整理(解析学 第I章 実数と連続12)


ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理は,「任意の有界な実数列は収束する部分列を含む」ことを保証しています.これは実数の連続性公理でもあります.
この概念をn次元に一般化したときにも成り立つのか考えます.このような性質を点列コンパクトといいます.
これは開集合や閉集合,コンパクト空間にも繋がる重要な基礎概念です.
これらの概念はたまに教科書を見返したりしていますが,一度整理したいと思います.

なお,「東京大学出版 杉浦光夫著 解析入門1」を参考としております.

ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理の一般化とは

解析学の基本となる微分・積分では極限操作が必要なため,厳密に論理を構築するために「実数の連続性公理」を導入しました.

その公理が,「ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理」.(他にも様々な言い換えあり.デデキント切断や有界単調数増加数列の上限など)

定理(ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理)

有界な実数列\(\{a_n\}\)は常に収束する部分列をもつ.

これは区間縮小法から証明することができます.
区間縮小法で小さくなる閉区間に含まれる数列の点を一つずつ取っていくと,それが収束する部分列になるという証明でした.

ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理の考えを一般化して,次の言葉を定義します.
でも何で一般化するのでしょうか.(そこが腑に落ちないと,私は中々本が読めない性格です.)
こうすることによって,多次元の場合などの直感が通用しない空間での収束が議論できますし,ラベルを貼って整理することが数学の真骨頂であり,一般化するメリットだと私は考えております.

\(K \subset \mathbb{R}^n\)の任意の点列\(\{x_n\}\)が収束する部分列\(\{x_{n(k)}\}\)を常に持つとき,それを\(K\)を全有界ということにします.

さらに,その収束点が\(K\)の中に収まっている時,\(K\)を点列コンパクトといいます.

例として,\([0,1]\)は点列コンパクトですが,\((0,1)\)は点列コンパクトではありません.

なぜなら,\([0,1]\)の中の点列(数列)は有界なので,ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理より,ある値\(\alpha\)に収束します.
そして,この収束値\(\alpha\)は\(0 \leq \alpha \leq 1\)です(点列コンパクト).
それはなぜかというと,もし,\(\alpha > 1\)だとすると,\(\alpha\)との距離を\(\epsilon = |\alpha – 1|\)より小さくなるように点列の値\(a_{n}\)が取れてしまい,結果\(a_{n} > 1\)となって\([0,1]\)の中の点列(数列)でなくなってしまうから矛盾となります.

\((0,1)\)に関しては,その中の点列として\(\displaystyle \left \{ \frac{1}{n} \right \}_{n=2}^{\infty}\)を取ったとすると,収束点0は\((0,1)\)に入っていないから点列コンパクトではありません.

何となく,\(\leq\)や\([ ]\)の場合は境界部分(端っこ)があって,これは点列コンパクトで,\(<\)や\(( )\)の場合は端っこがなくて,点列コンパクトでは無さそうです.

触点と内点

点列コンパクトのイメージは,境界(端っこ)があることのようです.
このことを厳密に定義します.

まずは集合の境界(端っこ)と中身を触点と内点で定義します.

定義(触点,内点)集合\(K \subset \mathbb{R}^n\)の元\(a\)が\(K\)の触点とは,\(a\)の任意の近傍が\(K\)と共通部分を持つこと.
集合\(K \subset \mathbb{R}^n\)の元\(a\)が\(K\)の内点とは,\(a\)のあるの近傍が\(K\)の部分集合になること.

集合の元は全て触点となりますが,集合に入っていなくても境界上に存在する点は触点です.
触点となる点全てを集めた集合を閉包といい,\(K\)の閉包を\(\bar{K}\)で表します.
また,集合の内点だけの集合を内部といい,\(K\)の内部を\(\overset{\circ}{K}\)で表します.

命題\(a \in \bar{K} \Longleftrightarrow a \in K\)に収束する\(K\)の点列が存在する.

証明
(\(\Longrightarrow\))
\(a\)の距離\(\epsilon\)の近傍を\(U(a,\epsilon)\)とする.
任意の自然数\(m\)に対して,近傍\(U(a,\frac{1}{m})\)をとると,\(a\)は触点より,\(K \cap U(a,\frac{1}{m})\)に元が存在するので,それを\(a_{m}\)とする.このように点列\(\{a_m\}\)を作ると,これは\(K\)の点列であり,\(a\)に収束する.

(\(\Longleftarrow\))
\(a\)に収束する\(K\)の点列を\(\{x_m\}\)とする.任意の正の実数\(\epsilon\)に対して,ある自然数\(N_0\)が存在し,\(x_{N_0} \in U(a,\epsilon)\)とできる(収束の定義).よって,\(K \cap U(a,\epsilon) \neq \emptyset\)なので,\(a \in \bar{K}\). ■

開集合と閉集合

さて,この命題から,閉包\(\bar{K}\)の任意の元\(k\)に収束する点列があるので,点列コンパクトということは,この収束点\(k\)が\(k \in K\)であることである.つまり,\(\bar{K} \subset K\).また\(K \subset \bar{K}\)なので,このとき\(\bar{K} = K\)が成り立つ.

そこでこの部分だけを取り出して,整理として閉集合というラベルをつける.

定義(閉集合)集合\(K \subset \mathbb{R}^n\)が閉集合とは次が成り立つこと.$$\bar{K} = K$$

つまり,閉集合とは,閉包が自分自身のこと.

また,内部に関しても同様に,内部が自分自身になる集合のことを開集合と定義する.

定義(開集合)集合\(K \subset \mathbb{R}^n\)が開集合とは次が成り立つこと.$$\overset{\circ}{K} = K$$

開集合と閉集合について,性質を整理します.

性質(1) \(A\)が閉集合ということは,\(\bar{A} = A\)となること.(定義)
(2) \(A\)が閉集合ならば,\(A\)の収束点列の極限は\(A\)の元で,その逆も成立.(命題)
(3) \(A\)が開集合ということは,\(\overset{\circ}{A} = A\)となること.(定義)
(4) \(A\)が閉集合 \(\Longleftrightarrow A^{c}\)が開集合.

(4)を示します.

\(A\)が閉集合 \(\Longleftrightarrow \forall x \in \bar{A} \Rightarrow x \in A\)
\(\Longleftrightarrow \forall \epsilon, U(x,\epsilon) \cap A \neq \emptyset \Rightarrow x \in A\)
(対偶を取って)
\(\Longleftrightarrow x \notin A \Rightarrow \exists \epsilon, U(x,\epsilon) \cap A = \emptyset\)
\(\Longleftrightarrow x \in A^c \Rightarrow \exists \epsilon, U(x,\epsilon) \subset A^c\)
\(\Longleftrightarrow x \in A^c \Rightarrow x \in \overset{\circ}{A^c}\)
\(\Longleftrightarrow A^c = \overset{\circ}{A^c}\)
\(\Longleftrightarrow A^c\)が開集合.          ■

さいごに

たまに勘違いして,開集合でない集合を閉集合としてしまいますが,間違いです.開集合の補集合が閉集合です.
開集合でも閉集合でもない集合もあるので,注意が必要です(1点だけ除かれた集合など).

いろいろな言葉を定義しましたが,これらのモチベーションは,解析学の基礎となる極限や収束,連続などの概念の本質を見つけ抽象化し,直感が通用しない空間でも同様に議論するためです.これらからアプリオリに証明ができるようになります.
また,実数の世界の中では点列コンパクトと有界閉集合とコンパクトは同値になりますが,一般にはそうとは限りません.
今回はここまでにします.

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