今回,2019年10月19〜20日に横浜で開催された数学イベント「マスパーティ」に参加してきましたので,そのレポートをさせていただこうと思います.
時間の都合上,一部にしか参加することはできませんでしたが,趣味で数学をされている方の熱い思いを感じることができました.
マスパーティについて
マスパーティとは,数学イベントである「日曜数学会」や「数学カフェ」,「数学デー」,「ロマンティック数学ナイトプライム」が一堂に集まる数学好きの数学好きによる数学好きのためのお祭りです.
もともと昨年までマスパワーという数学イベントが株式会社すうがくぶんか・和から株式会社・アスキードワンゴより開催されていましたが,今年は開催がないため,日曜数学会のキグロさん,日曜数学者の辻順平さん(tsujimotterさん)というお二人が今回企画されました.
マスパーティは2019年10月19日(土)から20日(日)まで30時間ぶっ通しで行われました.
参加者は出入り自由.
合計100人を超えるチケット購入があったとのこと.
チケットは1枚1,000円でお安い.
会場入り口
一般聴講者のバッジ.実はバッジ背景に\(\zeta (2) = \frac{\pi^2}{6}=1.64493 \cdots\)が書かれている.
プレゼンター,スタッフのバッジにはそれぞれ\(\zeta (3),\zeta (4) \)が書かれているとのこと.
マスパーティのリンクはこちら
イベントの様子
私は初日の日曜数学会と,二日目の企画者座談会,ロマンティック数学ナイトプライムしか参加しておりませんが,他にはガチな数学の授業を行う数学カフェや素数大富豪などのゲーム大会があったようです.
会場の様子.100名が入るくらいの一室で,前方にスクリーンがありました.
部屋にいるのは,常時5,60名ほどで,高校生から大人まで幅広い年代がいました.
出入りは自由なので,入れ替わり人が入っているような感じでした.
参加者の雑談など,いたるところから数学に関する会話が聞こえてきました.
しかも内容が大学修士以上の難しい専門用語ばかり.
私が聴講したセッションの半数以上も難しい数学でした.もう半分は数学愛を語るような内容でした.
初日セッション〜日曜数学会〜
時間の都合上,初日は日曜数学会のみ聴講しました.
14名のプレゼンターが5分間のライトニングトークで数学に関する話題を発表するというもの.
トークのテーマは数学に関していればなんでもOK.
tsujimotterさんによる数学の楽しみ方のトーク.
興味の赴くままに趣味で数学を探求することが日曜数学者.
数学の楽しみ方は人それぞれで,好きなように数学をすればよいと改めて実感.
私でいうと,数学書を読むこと,基礎から学んで論理を積み上げて,証明を全て理解すること.
キグロさんは実際に会社で役立っている数学についてトークをされていました.
使った数学は鶴亀算ですが,数学の知識を役立たせるためには,数学以外の知識が必要とのこと.
例えば密度測定では,対象の物質に関する知識や,どこに数学を使うかという発想力.
これには納得でした.
私も職場で,プログラムを組んでいる方や売上計算をされている方から,「○○というロジックを組みたい,△△の計算をしたい」と相談を受けて,
数学の知識が役立つことがありますが,前段の何をしたいか,どこに数学が生かせそうか,というところを考えることの方が大事だと思っていました.
逆に私は,数学の言葉に落とされた問題だったらできることはありますが,数学の言葉に落とし込むことが苦手なのかなと考えさせられます.
多分,今後の世の中で必要なのは,答えを出すことよりも,問題を作るスキルの方が重要なのかなと.
他のトークは,インド式計算や,フロベニウス写像の話,マリオメーカーによる論理演算など,レベルやジャンルも様々.
普段は学生時代に使っていた入門レベルの数学書を読んで勉強しているだけなので,新鮮さを感じました.
2日目セッション〜座談会〜
座談会の様子
数学イベントの企画者による座談会.
数学のコミュニティを広げていきたいという話でした.
日曜数学会ももともとニコニコ超会議での「野生の研究者」というイベント(今は解散)の一部で数学として呼ばれたのが始まりとのこと.
数学デーや関西日曜数学会は日曜数学会の懇親会から生まれたそうです.
ただ,イベント開催はかなり大変なようで,今回のマスパーティは15人くらいのスタッフに加えて手伝いが10人くらいでやって,ほぼ付きっきりになったとのこと.
それでも,数学が好きだからやっているというモチベーション.
数学好きが数学を話す場所を提供する。
いち参加者で数学の話を聞くだけでも楽しいですね.
2日目セッション〜ロマンティック数学ナイトプライム@ゼータ〜
このセッションを最大の楽しみにしていました.
私も大学院時代に,一応整数論を研究し,保型L関数なるゼータを扱ってきました.
数学の世界,特に整数論では,ゼータに対する信仰心が強く,全てはゼータではないかとも言われております.
私もゼータに関する話題は好きですが,実は楕円曲線だったり,ガロア理論の美しさの方が好きだったりします.
でも楕円曲線にもゼータがあり,やはりゼータは知っておくべきだと思っております.
内容は3部構成になっており,1部は初心者向けの導入,2部は整数論に留まらない様々なゼータ,3部はディープなゼータの話.
1部は知っている話が多かったので楽しく聞くことができました.
2部もピクロスとベルヌーイ数との関係の話や様々なゼータ関数の話だと興味深く聴けました.
3部は専門的な難しい話が多かったですが,分からなくても楽しい,そう思える内容でした.
オイラーの贈り物.関数等式やオイラー積という単語をみるだけでワクワクします.
こちらはtsujimotterさん作の触れるゼータ.実物に触れられて感動しました.s=1の極は畏れ多く触れませんでした…
こちらはVtuber 叶数理さんの講演.
格言めいたもので盛り上がったり,
未解決問題もあったり,皆さん大変なゼータ愛でした.
特に驚いたのは,高校2年生 たけのこ赤軍さんの発表.
なんとすでに3本の論文をarXivに投稿しているとのこと.
多重ゼータ値を研究しているとのこと.
普段の学校での数学の授業とかどうなっているんだろう.
当たり前過ぎて退屈なのではないだろうか..
さいごに
今回,一人で参加しましたが,ブログで有名な方やゼータ愛に溢れた方々と数学でお話させていただき,大変有意義な時間となりました.
特に個人的に良かったのは,東工大の加藤文元教授と会話できたことです.加藤先生はユニークで,それでいてカッコイイ方でした.
マスパーティでは数学をやっている人がヒーローになれる場所,数学を好きに語れる場所を提供しており,発表者の方は皆輝いていました.
そして数学のコミュニティを広げる素晴らしいイベントだと思いました。
ただ数学の楽しみ方は人それぞれで自分の中だけの数学の世界を作っている方もいるのだろうなと思いました.
また数学の素晴らしさを数学を知らないけど興味を持っている方に楽しんでもらえるように普及することも大事だと思いました.
数学に真に感動するには,やはりそれなりの数学の勉強や積み重ねが必要で,自分で本を読んで証明をなぞってみることも必要です.
そういう意味で私はもっと数学の地道な勉強をしていきたい,そう思えるイベントでした.
講演者の皆様,スタッフの皆様,2日間本当にお疲れ様でした.ありがとうございました.