円周率πが無理数であることの証明 〜2019年9月14日と円周率との関係〜


本日2019年9月14日は,円周率と関係の深い日だそうです.このような日に,円周率πが無理数であることを証明したいと思います.

円周率と2019年9月14日との奇跡の関係

次の気になる記事を発見しました.

『2019年9月14日』は円周率π(3.1415…)にまつわる奇跡の誕生日 日本数学検定協会が発表

この記事によると,

■円周率π(3.1415…)にまつわる奇跡の誕生日『2019年9月14日』
このたび、2019年9月14日を8桁の数字で表した「20190914」で検索したところ、小数点以下244桁めに存在することがわかりました。これは、私たちが生きている現代(西暦1900年1月1日~)以降の生年月日で検索した場合、円周率πの小数点以下に現れる最初の8桁となります。西暦1年1月1日(00010101)から2200年12月31日(22001231)まで範囲を広げて検索した場合でも、284年10月27日(02841027)が小数点以下159桁めに存在しますが、「20190914」は2番めに早く現れる生年月日となり、まさに円周率πにまつわる奇跡の誕生日と言えます。
出典元:『2019年9月14日』は円周率π(3.1415…)にまつわる奇跡の誕生日 日本数学検定協会が発表

円周率とは,円の円周の直径に対する比のことであり,$$\pi = 3.1415926535 \cdots$$と無限に続く数として知られています.その小数点以下無限に続く数の中の244桁目に,”20190914″という年月日が1900年以降では初めて登場するとのこと.

実際に円周率を小数点以下300桁まで調べてみました.
1行に60桁あります.

\(\pi = 3.\)
1415926535 8979323846 2643383279 5028841971 6939937510 5820974944 5923078164 0628620899 8628034825 3421170679 8214808651 3282306647 0938446095 5058223172 5359408128 4811174502 8410270193 8521105559 6446229489 5493038196 4428810975 6659334461 2847564823 3786783165 2712019091 4564856692 3460348610 4543266482 1339360726 0249141273

確かに,244桁目から”20190914″が登場しました.

円周率が無理数であることの証明 概要

このような奇跡的な日に,円周率が無理数であること証明したいと思います.私自身,円周率が無理数であることは今まで証明を見たことがありませんでした.
調べて見ると,1947年に数学者Ivan Niven(1915-1999,米)が発表した有名な初等的な証明方法があったため,こちらを参考としました.

参考元:A simple proof that π is irrational Ivan Niven. Bull. Amer. Math. Soc. 53 (1947), 509
https://www.ams.org/journals/bull/1947-53-06/

定理 \(\pi\)は無理数である.

証明は背理法です.3つのステップで行い,\(\pi\)を有理数と仮定することで矛盾する式を導きます.

  • ステップ①:仮定と整数係数多項式の準備
    ・ \(\pi=\displaystyle \frac{a}{b}\)と仮定
    ・ \(a,b\)から作られる関数\(f(x),F(x)\)を定義
    ・ 仮定から,\(F(\pi)+F(0)\)が整数であることを示す

 

  • ステップ②:\(f(x)\)と\(F(x)\)の関係式を導く
    ・ \(f(x) \sin{x}\)の原始関数が\(F^{\prime}(x)\sin{x}-F(x)\cos{x}\)である
    ・ \(\displaystyle \int_{0}^{\pi}f(x)\sin{x}dx=F(\pi)+F(0)\)が整数である

 

  • ステップ③:評価式から矛盾を確認
    ・\(0 < 整数F(\pi)+F(0)<1\)となり,矛盾

円周率が無理数であることの証明 詳細

証明:
ステップ①
\(\pi\)を有理数,つまり\(\pi=\displaystyle \frac{a}{b}\)とおく.ここで,\(a,b \in \mathbb{Z}_{>0}\).$$f(x)=\frac{x^n(a-bx)^n}{n!},$$$$F(x)=f(x)-f^{(2)}(x)+f^{(4)}(x)- \cdots +(-1)^n f^{(2n)}(x)$$とおく.

このとき,$$n!f(x)=x^n(a-bx)^n=c_1x^n+c_2x^{n+1}+\cdots+c_nx^{2n}$$は,整数係数多項式である.

また,$$f(0)=0,f(\pi)=f\left (\displaystyle \frac{a}{b}\right )=0$$

\(0\leq j < n\)のとき,$$f^{(j)}(x)=\mathcal{O}(x)$$$$∴ f^{(j)}(0)=0$$
\(n\leq j \leq 2n\)のとき,$$f^{(j)}(x)=\displaystyle \frac{1}{n!}\frac{d^j}{dx^j}\left (c_j x^j+ \cdots \right )=\frac{j!}{n!}c_j+\mathcal{O}(x)$$$$∴ f^{(j)}(0) \in \mathbb{Z}.$$

$$f(\pi -x)=f\left(\displaystyle \frac{a}{b}-x \right)=\frac{x^n(a-bx)^n}{n!}=f(x)$$より,$$f^{(j)}(x)=(-1)^{j}f^{(j)}(\pi-x)$$よって,$$f^{(j)}(\pi)=(-1)^jf^{(j)}(0) \in \mathbb{Z}$$
以上より,\(f^{(j)}(0)\)と\(f^{(j)}(\pi)\)は整数.

したがって,$$F(\pi)+F(0)=f(\pi)-f^{(2)}(\pi)+\cdots +f(0)-f^{(2)}(0)+\cdots$$は整数である.

ステップ②
$$\frac{d}{dx}\left \{F^{\prime}(x)\sin{x}-F(x)\cos{x}\right \}$$$$=F^{\prime \prime}(x)\sin{x}+F^{\prime}(x)\cos{x}-F^{\prime}(x)\cos{x}+F(x)\sin{x}$$$$=\left (F^{\prime \prime}(x)+F(x)\right )\sin{x}$$$$=\left (f^{\prime \prime}(x)-f^{(4)}(x)+\cdots+(-1)^nf^{(2n+2)}(x)+f(x)-f^{\prime \prime}(x)+f^{(4)}(x)-\cdots+(-1)^nf^{(2n)}(x)\right )\sin{x}$$$$=\left (f(x)+(-1)^nf^{(2n+2)}(x) \right )\sin{x}$$ここで,\(f\)の次数は\(2n\)より,\(f^{(2n+2)}=0\)$$∴ \frac{d}{dx}\left \{F^{\prime}(x)\sin{x}-F(x)\cos{x}\right \}=f(x)\sin{x}$$$$∴ \int_{0}^{\pi}f(x)\sin{x}dx = \left [F^{\prime}(x)\sin{x}-F(x)\cos{x}\right ]_{0}^{\pi}$$$$=F(\pi)+F(0)(整数).$$

ステップ③
今,\(0<x<\pi\)とすると,$$0<f(x)\sin{x}=\frac{x^n(a-bx)^n}{n!}\sin{x}<\frac{\pi^na^n}{n!}$$$$∴ 0<\int_{0}^{\pi}f(x)\sin{x}dx=F(\pi)+F(0)(これは整数)<\int_{0}^{\pi}\frac{\pi^na^n}{n!}dx=\frac{\pi^na^n}{n!}\pi<1$$最後の不等式は,実数\(\alpha\)に対して,\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}\displaystyle \frac{\alpha^n}{n!}=0\)なので,\(n\)を十分大きくとれば,できる.
その証明は次の記事の例題を参照:収束を求めるのに便利!はさみうちの原理の使い方とその厳密な証明

したがって,ある整数\(M=F(\pi)+F(0)\)が,$$0<M<1$$となるため,矛盾.
よって,\(\pi\)を有理数としたことが誤りで,\(\pi\)は無理数である.

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