収束を求めるのに便利!はさみうちの原理の使い方とその厳密な証明


数列の収束を求めるのに様々なテクニックがあります.

その一つにはさみうちの原理というものがあります.

これは収束性を求めることが難しい数列を簡単な数列で下からと上から評価してあげて,目的の数列の極限値を求めるものです.高校数学ではあいまいに説明されていたこの原理を,ε-N論法から厳密かつ分かりやすく解説します.

はさみうちの原理

まずははさみうちの原理の主張を述べます.

定理(はさみうちの原理)数列\(a_n\)と\(b_n\)が共に\(\alpha\)に収束していて,\(a_n \leq b_n\)とする.このとき,数列\(c_n\)が\(a_n \leq c_n \leq b_n\)ならば,数列\(c_n\)も\(\alpha\)に収束する.

一見当たり前のように聞こえます.

この原理のポイントは,目的の数列\(c_n\)が難しくても,収束していることが分かっている簡単な数列\(a_n,b_n\)で挟んであげれば,数列\(c_n\)の収束も評価できるということです.

例題ではさみうちの原理の威力を確認します.

数列の収束に関する例題

例題\(a\)を実数とする. \(\displaystyle \lim_{n \to \infty}\frac{a^n}{n!}\)を求めよ.

まずはどんな数列なのか確認してみます.\(a\)は実数としか書いてないので,適当に2としてみます.\(n=1,2,3,4,5\)とすると,$$\frac{2^1}{1!} = 2$$$$\frac{2^2}{2!} = 2$$$$\frac{2^3}{3!} = \frac{4}{3}$$$$\frac{2^4}{4!} = \frac{2}{3}$$$$\frac{2^5}{5!} = \frac{4}{15}$$
途中から分母の方が大きくなってきました.\(n!\)は非常に大きくなりますので,分母の方が大きくなりそうです.つまり0に近づきそうだと予想できます.しかし,分子aが非常に大きい実数だとどうでしょうか.自信を持ってそう言えるでしょうか.ではここで,0に収束すると予測しつつ,はさみうちの原理を用いてそれを証明したいと思います.

ポイントは数列\(\displaystyle \frac{a^n}{n!}\)より小さな数列と大きな数列でかつ簡単なものを見つけることです.

まず\(0 \leq \displaystyle \frac{a^n}{n!}\)です.なので\(a_n = 0\)とします.次に\(b_n\)です.\(\displaystyle \frac{a^n}{n!}\)をうまく変形して見つけます.
$$\frac{a^n}{n!} = \frac{a・a・a・\cdots・a・a}{n(n-1)(n-2)\cdots ・2・1}$$$$ =\frac{a}{n}・\frac{a}{n-1}・\frac{a}{n-2}・\cdots・\frac{a}{2}・\frac{a}{1}$$ここで,アルキメデスの原理より,どんな実数\(a\)よりも大きな自然数\(N\)が取れるので,$$m \geq N \Rightarrow \frac{a}{m} \leq \frac{a}{N}$$かつ$$\left |\frac{a}{N} \right |<1・・・①$$よって,$$\frac{a^n}{n!} \leq \frac{a}{N}・\frac{a}{N}・\cdots ・\frac{a}{N}・\frac{a}{N-1}・\frac{a}{N-2}・\cdots ・\frac{a}{2}・\frac{a}{1}$$$$= \left ( \frac{a}{N} \right )^{n-N+1}・\frac{a}{N-1}・\frac{a}{N-2}・\cdots ・\frac{a}{2}・\frac{a}{1}$$$$= \left (\frac{a}{N} \right )^{n-N+1}・定数M \rightarrow 0  (∵①より)$$

以上より,0に収束する数列として,\(b_n = \displaystyle \left (\frac{a}{N} \right )^{n-N+1}・定数M\)が見つかりました.このとき,\(a_n \leq \displaystyle \frac{a^n}{n!} \leq b_n\)なので,はさみうちの原理より,$$\lim_{n \to \infty}\frac{a^n}{n!}=0$$だと求まりました.

はさみうちの原理の厳密な証明

でははさみうちの原理の証明です.
ε-N論法を使います.

目的の式は,$$|c_n – \alpha| < \epsilon$$です.

証明:
数列\(a_n,b_n\)の収束条件より,$$\forall \epsilon > 0, \exists N \in \mathbb{N}, n \geq N \Rightarrow |a_n – \alpha|<\epsilon,|b_n – \alpha| < \epsilon$$

これは,$$\alpha – \epsilon < a_n < \alpha + \epsilon, \alpha – \epsilon < b_n < \alpha + \epsilon$$ということ.

条件より,\(a_n \leq c_n \leq b_n\)なので,$$\alpha – \epsilon < a_n \leq c_n \leq b_n < \alpha + \epsilon$$よって,$$|c_n – \alpha| < \epsilon$$となり証明完了.

まとめ

はさみうちの原理は,扱いの難しい数列を簡単な数列に置き換えて議論できるという利点があります.またその証明はε-N論法から明らかです.高校の授業ではさみうちの原理を説明するときも,感覚的というよりε-N論法というものがあることを軽くでも説明できればよいと思います.

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