微分積分を速度と距離の関係で理解する(自然科学研究会2 生活の中の数学 その2)


会社の同僚の方とたまに自然科学研究会なるものを開催しております。
自然科学のあるテーマに沿って自由にプレゼンするものです。
第二回では私は「生活の中の数学」というテーマでプレゼンしました。

今回は,高校数学の一里塚でもある微分積分と速度・距離の関係について紹介します.

微分積分って身近にある?

高校数学の一里塚(と勝手に呼んでます)である「微分積分」.

文系の方や数学をあまりご存知ない方でもそういうものがあるというのは聞いたことがあるかと思います.ニュートンのリンゴが有名なエビソードです.でも微分積分ってそもそも何か?実社会でいうとどう使われている?と聞かれると,なかなか答えづらいものだと思います.

誰でも身近に感じられるのは,ドライブなど車の速度メーターだと思います.

距離,速度,時間の関係

車でドライブしていると,この時間でこのくらいの距離走ったから速さはこのくらいだなとか,今このくらいの速さで走っているから目的地まであとどのくらいかかりそうだな,ということをしばしば考えます.

カーナビやgoogleマップ見れば分かりますが,それも参考にしつつ,自分の頭で考えることも重要です.

例えば,90分間車を走らせ,60km走った場合,車の速さはどのくらいだったでしょうか?車の時速を求めてみましょう.

時速とは,一時間あたり(単位時間あたり)に車が進む距離のことです.割合で考えれば,走った距離60kmを時間90分=1.5時間で割って単位時間の割合を求めてみましょう.

小学校などで,き・は・じの公式も習いますが,公式の暗記より,なぜそういう計算をするのか,仕組みを理解することがはるかに重要です.

さて,60÷1.5をすると車の速さは, 40km/hだと分かります.

ここで,距離と速度と時間の関係を考えてみましょう.

グラフにすることで色々なことが見えてきます.答えを出して終わりではなく,グラフから読み取れることを考察することが必要ですね.

この場合,x軸を時間,y軸を移動距離とすると次のスライドのようになります.

そして,この一次関数$$y=40x$$の傾き40がこの車の速さだったのです.

しかしながら,同じ速さで走り続けることは稀です.普通は時間と共に車の速さも変わるでしょう.

微分で速さを求める

では,この車の速さは?今回はx軸の時間の経過と共に,速さが速くなっており,下のスライドのように曲線になっています.

これも,グラフから速さを読み取ると,ある時間xでの接線の傾きがその瞬間の速さです.

そして,実は

グラフの接線の傾きを求めるのが微分法

なのです.

微分とは距離と時間の関数から傾き=速度を求める演算のことで,例えば,距離と時間の関数が,二次関数$$y = 10x^2$$で表されていたとします.一般的に多項式の関数$$ax^n$$の微分は指数部分が掛けられ,指数をマイナス1する,$$a・n・x^{n-1}$$です.よって関数yを微分すると,$$20x$$となり,これが速さを表す関数となります.

このように,距離と時間の関数を微分すると,速さと時間の関数が得られます.

微分は,ものの動きの瞬間の変化を捉えるものです.

速さの関数を微分すると何が出るか?

では次に,この速さの関数をさらに微分すると何が出てくるでしょうか.計算としては,\(20x\)を微分して,$$20$$となります.

これは,速さの瞬間の変化を表しているので,速さを変化させる要因「加速度」が出ています.

速さから移動距離が分かる

では,このくらいの速さでこれだけの時間を走っているから進んだ距離はこのくらいだ,という感覚を数学で考えてみます.

つまり,距離を知りたいなら,車の速さと走った時間を掛ければいいわけです.それをx軸を時間,y軸を速さのグラフで表します.

すると,時間×速さは面積となり,これが移動距離を表しています.

今のは,車の速さが一定の場合でしたが,速さが時間によって変わった場合でも同様に移動距離がわかります.面積を求めればいいのです.

青い部分の三角形の面積が移動距離ということです.

では速さが一次関数で表せなかったら?

積分で距離を求める

例えば次のように時間と共に速さが変化する場合の移動距離を知りたかった場合,先ほどと同様に考えると囲まれたオレンジの部分の面積を求めればいいわけです.

といっても,その面積はどのように求めればいいのでしょうか.我々が計算できる面積は四角形や三角形などです.
答えは,

小さな長方形に分割して,その長方形たちの面積で近似する

です.この考えは取り尽くし法といって,古代ギリシャ時代からありました.

この小さな長方形をどんどん小さくして近似してやると誤差が小さくなりそうです.この考えこそが,積分法です.

世紀の大発見「微分積分法の基本定理」

微分法は,ニュートンやライプニッツが17世紀に発見した瞬間の変化を調べる理論でした.

積分法は古代ギリシャ時代からあった,小さな図形で近似するという考えでした.

ニュートンやライプニッツの偉大な発見とは,生まれも時代も異なる二つの演算,

微分と積分が実は逆の演算

だったというものです.

これが「微分積分法の基本定理」といわれ,解析学で重要な定理となっています.

ニュートンのリンゴのエピソード

最後にニュートンはリンゴが木から落ちているのを見て何を発見したかを述べます.

ニュートンは,リンゴが落ちていく時間と距離を計算し,そこからリンゴの落下速度を記述するために微分法を発見したといわれています.
そして,落下速度をさらに微分することで,重力,つまり万有引力を発見した,という逸話です.
これも先ほどの車の距離,速さ,加速度と同じですね.

とは言っても,このエピソードは作り話というのが有力だそうです.

 

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