我々は今,実数の連続性を公理とし,数列の極限について定義しました.ここから得られる結果として,有界な単調増加数列の収束先を論じます.またその結果を用いて,一見当たり前のように思えるアルキメデスの原理を厳密に証明します.
目次【本記事の内容】
なお,「東京大学出版 杉浦光夫著 解析入門1」を参考としております.
上に有界な単調数列の収束
上で述べた定理は,上に有界を下に有界に置き換えることで同様に\(\inf\)に収束することも示せます.
証明:
まず,実数の連続性公理として我々は上に有界な集合には上限が存在することを認めています.よって,数列の集合の上限として,\(\alpha = \sup\{a_n | n \in \mathbb{N}\}\)とおくことができます.数列\(a_n\)が\(\alpha\)に収束することを示すには,収束の定義から以下を示せばよいです.$$\forall \epsilon > 0 , \exists N \in \mathbb{N}, s.t. n \leq N \Rightarrow |a_n – \alpha| < \epsilon$$ ここで上限の定義より,$$\forall n, a_n \leq \alpha・・・①$$$$\forall \epsilon >0, \exists N \in \mathbb{N}, s.t. \alpha – \epsilon < a_N・・・②$$
である.①より,$$a_n < \alpha + \epsilon・・・③$$数列\(a_n\)の単調増加性と②より,$$n \geq N \Rightarrow \alpha – \epsilon < a_n・・・④$$なので,③と④より,$$\forall \epsilon > 0 , \exists N \in \mathbb{N} s.t. n \geq N \Rightarrow \alpha – \epsilon < a_n < \alpha + \epsilon$$これは\(|a_n – \alpha|<\epsilon\)ということであるので示せた.
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アルキメデスの原理の証明
アルキメデスの原理の主張は以下です.
これは,仮にどんなに小さな数\(a\)とどんなに大きな数\(b\)をとったとしても,仮に\(a=0.000001,b=9999999\)としても,この小さな数\(a\)を何回も何回も足せば(\(n\)回足せば)いずれ\(b\)を追い越すということです.
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}\frac{1}{n} = 0\)の証明でも本質的に使われています.
数列が収束するとは?数列の収束の計算方法について解説(解析学 第I章 実数と連続3)
またアルキメデスの原理は,$$\lim_{n \to \infty}n = + \infty$$であるということも主張しています.
では有界単調増加数列の収束性から証明します.
証明:
定理の主張は数列\(\{na | n \in \mathbb{N}\}\)に上界がないことを言っています.そこで数列\(\{na\}\)に上界\(u\)が存在すると仮定して矛盾を導きます.
\(u\)が上界とすると,数列\(\{na\}\)は単調増加数列で上に有界より,定理から上限\(s = \sup \{na\}\)に収束します.つまり上限の定義より,$$\forall n, na \leq s・・・☆$$$$\exists n , s-a < na$$.(\(a>0である\))$$∴ s < (n+1)a$$ところが,\((n+1)a \in \{na | n \in \mathbb{N}\}\)なので,これは☆の上限性に矛盾する.
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まとめ(実数の連続性公理)
Dedekindの切断に関する実数の連続性公理から議論をスタートして,収束の定義によって今まで分かったことを次でまとめておきます.