数学科は大学で何をやっている?


数学科に進学すると,周りからこの手の質問をされる可能性大です(笑)

私は高校の時に数学の面白さに目覚めて迷うことなく数学科への進学を選択しました.
進学の理由は数学を勉強したかったから.
周りから見るとおかしな奴と思われたでしょうが,当時の私はもっと数学を知りたいという好奇心しかありませんでした.
今回は私の大学での体験談をご紹介します.

数学科は数学をやっています.ただし,高校までの数学ではなく本物の学問としての数学です.高校からのギャップで付いていけなくなる人もいます.

大学1年生 〜空間への誘い〜

大学1年生では,「微分積分」と「線形代数」を学びます.

微分積分は,他の理系学生もいたためいわゆるε-δ論法からはじめる解析学ではなく,高校の微積分の延長といった感じでした.直感的な微分の定義からリーマン積分の定義,関数を多項式で近似するTaylor展開,重積分くらいまでやったと思います.

線形代数は,ベクトルと行列からスタートしました.この辺は高校でもやってますし,連立方程式がシステマチックに解けるというのは何か感動しました.しかし,線型空間に入った辺りから意味が分からなくなりました.この辺りから数学科の洗礼を浴びるのですかね.今となっては何で当時は分からなかったのだろうという気がしますが,線型空間はベクトルを元にもち,和とスカラー倍が定義された集合です.空間という概念が何ともはじめは取っ付きにくかったです.何で1年生で学ぶかというと,色々な所に応用されているからです.例えば量子力学の演算など.また線型空間から線型空間への写像は行列ですが,この写像は画像の回転や縮小等にも使えます.近年ではデータ分析に線形代数は必須です.

大学1年生で学ぶ数学は少ないですが,数学以外の理系科目も取る必要がありました.また教養科目も当然あります.

大学2年生 〜数学の考え方に触れる〜

大学2年生では,私の大学では,「ε-δ論法」「ベクトル解析」「複素解析」「微分方程式」「統計学」がありました.私の大学は2年生くらいまで他の理系学生と一緒だったため,数学科目は少ないのですが,その分物理学の授業を取っていました.
2年生では少し厳密な議論を学びましたが(ε-δ論法),解析学に偏っていますね.この辺は何だそんなものかといった感じでした.

ただ,このε-δ論法の講義では,集合や論理についても学び,特に「同値関係」という考え方は大変感動しました.この辺が理解できれば数学の証明方法が分かってきます.

大学3年生 〜本格的な数学が始動〜

大学3年生では,「代数学」,「解析学」,「幾何学」を学びました.

何かいきなりレベルがアップしました.
代数学では,群,環,体を学びます.これらは代数構造を記述するものです.かなり抽象化されており私はここでまず躓きました.演算というものの本質を取り出すことで,和とか積とかも含め,何かと何かで何かができるということを数学の言葉で記述します.それによって,具体的事象としては全く異なるものでも,本質的には一緒の現象だよね,ということがカッコよく言えるようになります.

解析学では,ε-δ論法を基礎に関数項級数を扱ったり収束を議論します.複素関数は微分可能性の縛りが強く,それによって局所的な情報から大域的なことが決まってしまうという考えが好きでした.

幾何学では,位相空間というものを学びます.位相とは近いとか遠いとか距離を論じる概念です.それまでは距離というと差の絶対値しかなかったわけですが,そこは発想が自由な数学,様々な距離を定義します.目に見えないものまで自由に距離を測ろうというわけです.これは宇宙の形を記述する幾何学に応用されます.

大学4年生 〜黒板への磔〜

大学4年生では,講義はありましたがセミナーがメインになります.

一人の指導教官に複数の学生が付いて,読む数学書を決めて,年間を通して読み毎週発表するというものです.
一つの数学書を皆んなで読む,輪講スタイルもありますし,それぞれが別々の本を読むこともあります.

さて,ここでゼミ(指導教官)の選択を迫られることになります.
私は就職のことも考えて確率論のゼミに入ろうと思ったのですが,純粋な興味から行くと,フェルマーの最終定理などの浪漫溢れる話が大好物だったため,整数論ゼミに入りました.

それまでの私の得意分野はどちらかというと代数学だったので,整数論も何とかなるだろうと思っていました.

ところが,知らなかった私が愚かなのですが,整数論は数学の様々な理論を研究の道具として使います.代数学はもちろんのこと,代数体の類数を調べようとすると解析学の知識が必要ですし,面白い数の分布もまさに解析学が必須です.代数曲線として方程式の解を調べようとすると,多様体の知識が必要です.整数論は他の数学の理論を惜しげも無く使い,結果を出しており,整数論は数学の女王と言われる所以です.

ということで全く知識が足りていなかった私は,渡された本「セール 数論講義」を毎週ひいひい言いながら読んで,黒板で指導教官,ゼミ生向けに講義をしました.
指導教官からは様々な指摘(理論のギャップ)を受け,答えられず黒板に張り付けられるということを何度も経験しました。。
そのおかげで数学書を読む力というのを養いました.

このあと,大学院進学を決めるのですが,それは別の機会にご紹介したいと思います.

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